はじめに

千葉県市川市の南部に位置する行徳地区は、首都圏近郊のベッドタウンとして一般には知られている。しかし、その歴史を紐解けば、戦国期から明治期にかけて栄えた製塩の町、江戸時代以来の水運・宿場・寺社の町、そして明治~昭和にかけては国内随一の神輿づくりの町として歩んだ豊かな歴史的・文化的伝統を有している。1969 年の地下鉄東西線全通を機に、当地区にも大規模な開発の波が押し寄せたが、開発圧のほとんどは区画整理された新市街地へ向かい、旧市街地のコアは直接的な開発の影響を免れた。結果、歴史的な町割りや、そこで育まれた伝統行事・祭事の多くが21 世紀の現在に至るまで健在である。東京近郊の多くの町がその個性を希薄化させていく中で、わが町=行徳は、いわゆる「濃い」伝統文化を今に伝える稀有なエリアと言えよう。


そんな我が町には、江戸時代に建てられた常夜灯をはじめ、由緒ある神社仏閣、伝統的な町屋建築など、多くの景観資源が残されている。これらを活用し、現代のまちづくりに生かしていくことは、地域ブランドを高めるのみならず、そこに暮らす私たちが地元への愛着や誇りを持ち、地域の担い手として生き生きと活躍していくことにもつながるはずである。また、魅力的な街並みが形成され、そこを行き交う人が増えることは、防犯効果の向上を通した「安心・安全」なまちづくりや、交流人口の増加にもつながっていくだろう。今一度、本来の「行徳らしい」景観の良さを認識し、現代的な文脈に生かしていくことは、持続可能な地域づくりの観点からも求められているはずだ。

本書は上記のような課題意識の下、行徳まちづくり協議会・景観部会のメンバーが「景観まちづくり」の観点から行徳の未来像について検討した成果をまとめたものである。本書をきっかけに多くの方が地元の景観に関心を持ち、今後のまちづくりについて考えるきっかけとなれば幸いである。

2024 年5 月24 日
行徳まちづくり協議会 景観部会 一同

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